社内ネットワーク、クラウドサービス、業務システム、メール、顧客情報の管理。日々の業務の多くはITインフラの上で動いています。一方で、サイバー攻撃による情報漏えいやシステム停止、設定の不備によるトラブルも身近になりました。高性能な機器やソフトウェアを入れるだけでは対策は終わらず、製品を適切に選び、正しく設定し、運用を続けられる体制が要ります。そこで改めて見ておきたいのが、ITサービスを提供する会社そのものの技術力です。
この記事の要点
- 価格、機能、導入実績の比較だけでは、障害やセキュリティ上の問題が起きたときの対応力までは分かりません。
- 技術力は、障害の原因を調べる力、構成や設定の理解、継続的なセキュリティ対応、組織としての体制、できないことの説明の5点から確かめられます。
- 商談では、具体的な対応事例と、自社で対応する範囲・外部に任せる範囲を質問すると、対応力をつかみやすくなります。
サイバー攻撃やシステム障害は、もはや他人事ではない
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」では、発注元の企業からセキュリティ対策の要請を受けた中小企業が挙げた課題として、「対策費用の用意、費用負担の検討」が51.3%で最も多く、「専門人材の確保・育成」も32.9%ありました。費用と人材の両方が足りない、という姿です。
費用をかけて製品を入れても、設定と運用が伴わなければ効果は出ません。社内に専門の人材を置きにくい会社ほど、製品を選び、設定し、運用を支える外部のIT企業の力に頼ることになります。IT企業の選び方が、そのままセキュリティ対策の質に関わってきます。
IT企業を選ぶ基準は、価格や製品だけでよいのか
ITサービスを導入するとき、多くの企業は次のような項目を比べます。
- 製品やサービスの機能
- 導入費用や月額料金
- 導入実績や取引先企業
- 営業担当者の説明や提案内容
- 導入までの期間
- 企業の継続年数、資本金の規模、技術者の人数
- 内製化率(外部への委託にどの程度頼っているか)
- 国内データセンターの利用の有無
どれも大切な判断基準です。ただ、説明が分かりやすく、価格が安いからといって、技術力の高い会社だとは言い切れません。
たとえば、ネットワーク機器を入れた後に通信障害が起きたとき、原因を特定し、必要な設定変更を行い、業務への影響を小さく抑えられるか。セキュリティ上の問題が見つかったとき、影響範囲を調べ、適切な対策を提案できるか。構成が複雑になっても、既存環境との関係を理解して問題を解決できるか。
こうした場面で差が出るのは、製品の知識だけではない、実践的な技術力と対応力です。ITサービスは導入して終わりではありません。問題が起きたとき、環境の変化に合わせなければならないときに、提供する会社の力が表れます。
技術力のあるエンジニアを確保する競争が強まる可能性
セキュリティ対策の高度化とIT環境の複雑化に伴い、専門的な知識と経験を持つ人材が求められています。
KPMGジャパンと日本経済新聞社の「サイバーセキュリティサーベイ2026」(2026年2月に速報を公表、国内上場企業424社が回答)では、過去1年間のサイバーインシデントによる被害額が1億円以上だった企業は10.1%でした。2023年調査の6.7%、2025年調査の8.0%から増えています。被害額が1億円以上となった企業の割合は、セキュリティ推進組織の人員が不足している企業で高くなる傾向があったとも報告されています。
MM総研が2026年9月に公表した「民間企業におけるサイバーセキュリティ対策の動向調査」(セキュリティ担当者1,000人が回答)では、83%の企業がサイバーセキュリティ分野の人材不足を認識していました。
こうした状況を踏まえると、今後は優秀なエンジニアを採用するだけでなく、育て、長く在籍してもらえる会社の価値が高まると考えられます。これは、ITサービスを利用する側の企業にとっても大事な点です。
契約先に優秀な技術者がいても、その人が退職したり担当から外れたりすれば、同じ品質のサポートを受けられなくなるおそれがあります。知識やノウハウが特定の担当者に集中している会社では、その担当者が不在のときに対応が滞ることもあります。IT企業を選ぶときは、いまの技術力に加えて、技術者を育てる仕組みと、組織として知識を蓄え、共有する体制にも目を向けたいところです。
もう一つ確かめたいのは、問題が起きたときに、その会社がどこまでを自社で対応し、どこからを外部の会社に任せるのかです。専門会社と連携すること自体は珍しくありません。大切なのは、任せている範囲を把握し、切り分けと顧客への説明を自社の責任で行えるかどうかです。
フォースネットの場合
フォースネットでは、ネットワークやインフラの構築を、ヒアリングから提案、設計、設定、構築、運用・保守まで、自社のスタッフが一貫して担当しています。
インフラ構築のほかに、VPN、ファイル送受信、クラウドPBXなどのサービスや、VoIPゲートウェイ、L2延伸BOXといった機器を、自社で企画・開発しています。機器やサービスを作る側の経験は、構築の設計や、障害が起きたときの切り分けに生きています。
本当に技術力のあるIT企業を見極める5つのポイント
ITサービスを提供する会社の技術力は、資格や導入実績だけでは分からない部分が多くあります。具体的な対応事例と運用の体制を確かめることが役に立ちます。
1.障害発生時に、原因を調査・特定できるか
まず確かめたいのは、トラブルが起きたときの対応力です。機器を再起動したり設定を初期化したりするだけでは、根本的な解決にならないことがあります。ログ、通信の状況、機器の設定、システムの構成を確かめ、原因を切り分けながら解決策を検討できるかが問われます。選定の場では、次のように質問してみてください。
- 過去に、どのような障害や技術的な問題を解決しましたか。
- 原因がすぐに分からないトラブルには、どのような手順で対応しますか。
- 障害の原因と再発防止策を、顧客に説明してもらえますか。
具体的な事例を交えて答えられる会社であれば、対応力を判断する材料になります。
2.製品を販売するだけでなく、構成や設定まで理解しているか
実際の企業環境では、複数の機器やサービスを組み合わせて使うのが普通です。製品単体の知識に加えて、ネットワーク構成、既存システムとの接続、セキュリティ設定、運用上の制約を理解していることが欠かせません。ネットワーク機器の導入であれば、機器の性能だけでなく、既存ネットワークとの接続方式、通信経路、障害時の影響範囲まで考えているかが分かれ目になります。提案を受けるときは、次の点を確かめましょう。
- なぜ、この構成や製品を推奨するのか。
- 自社の既存環境に、どのような影響があるのか。
- 導入後に想定される課題や制約は何か。
メリットだけでなく、制約や注意点も具体的に説明する会社は、導入後の運用まで考えて提案しているとみることができます。
3.セキュリティを導入時だけでなく、継続的に考えているか
セキュリティ対策は、一度実施すれば完了するものではありません。ソフトウェアの脆弱性、機器のサポート終了、利用環境の変化、新しい攻撃手法に応じて、見直しを続ける必要があります。製品の導入に加えて、導入後の管理と改善についても確かめておきます。
- 脆弱性やサポート終了に関する情報を提供してくれるか。
- ファームウェアやソフトウェアの更新方針が明確か。
- 設定変更や機器交換が必要になったときに相談できるか。
- セキュリティ上の問題が起きたときの連絡と対応の手順が決まっているか。
自社だけでは判断が難しいセキュリティ上の問題を相談できる相手がいることには、大きな意味があります。保守契約にどこまで書いておくかは、保守契約に書かれていない「その日」の取り決めで整理しています。
4.特定の担当者に依存せず、組織として対応できるか
優秀なエンジニアがいることは、IT企業の強みです。ただ、その人がいなければ対応できない状態では、顧客は安心して任せ続けられません。確かめたいのは、技術者個人の能力に加えて、会社として対応できる仕組みがあるかどうかです。
設計書や設定情報が管理されているか、障害対応の履歴が記録されているか、複数の技術者が情報を共有しているか、といった点です。問い合わせ窓口と技術部門の連携も見ておきます。営業担当者が窓口であっても、技術的な問題が起きたときに専門のエンジニアへつなぎ、調査と対応を進められる体制があれば、顧客は相談しやすくなります。
5.できることと、できないことを明確に説明できるか
どのような要望にも「できます」と答える会社が、優れているとは限りません。実際のIT環境では、製品の仕様、既存設備との互換性、予算、運用体制によって、実現できることと難しいことがあります。
信頼できる会社は、実現できる範囲を確かめたうえで、必要な条件と制約を説明し、難しい場合には代替案を検討します。分からないことを曖昧に答えず、調べてから回答する姿勢も大切です。技術的なリスクを事前に説明し、顧客と認識を合わせながら進める会社は、長く付き合う相手として検討する価値があります。
障害対応の一例:クラウド基盤の移行後に起きた通話の不具合
フォースネットが調査の依頼を受けた例を一つ紹介します。クラウドPBXを利用している企業で、サービスが動くクラウド基盤を別の事業者のものへ移した後、通話に雑音が入る、音声が途切れる、着信しないといった不具合が起きました。
この調査では、ネットワークの構成と設定を確かめ、通信に使うポートとプロトコルの単位でログを分析しました。あわせて、クラウド基盤ごとに異なる仕様やルールも調べ、切り分けを重ねて原因を特定し、不具合を解消しました。
通話の不具合は、電話のソフトウェア、ネットワーク、クラウド基盤のどこに原因があっても、同じような症状として現れます。通信、ネットワーク、ソフトウェアのそれぞれに詳しい技術者が一緒に調べられたことが、原因の特定につながりました。
技術力を見極めるために、商談で確認したい質問
IT企業の技術力は、Webサイトに載っている実績や資格だけでは判断しきれません。商談や提案の場で次のように質問すると、対応力を具体的につかみやすくなります。
- 障害対応:原因が分からない障害が起きた場合、どのように調査しますか。
- 技術者の体制:担当エンジニアが不在の場合、ほかの技術者が対応できますか。
- セキュリティ:脆弱性や機器のサポート終了について、どのように情報提供していますか。
- 導入・設計:当社の既存環境を確認したうえで、構成や設定を提案してもらえますか。
- 運用・保守:導入後の設定変更やトラブルにも対応してもらえますか。
- 対応範囲:自社で対応できる範囲と、外部の専門会社に依頼する範囲を教えてください。
すべての技術を自社の中に持っていることが、優れた会社の条件というわけではありません。専門会社との連携も含めて必要な技術力を確保し、責任を持って顧客を支援できるかどうかが大切です。
価格だけでなく「問題解決力」に目を向ける
ITサービスの選定では、初期費用や月額料金の比較が欠かせません。ただ、導入費用を抑えられても、障害が起きたときに原因を特定できない、問い合わせへの対応が遅い、環境の変化に合わせられないといった問題があれば、業務への影響や追加の費用が後から発生します。製品や価格の比較に加えて、導入後にどのような支援を受けられるのかを確かめておきたいところです。
とくに、社内に専門のIT技術者が少ない中小企業では、技術的な課題を相談できる外部の会社の存在が、安定した事業運営を支えます。
まとめ:頼れるIT企業は、導入後の対応力で見えてくる
IT企業を選ぶときは、製品の機能、価格、導入実績に加えて、その会社がどのような技術者を抱え、どのような体制で顧客を支援しているかを確かめます。見るのは次の5点です。
- 障害の原因を調査し、解決できる技術力がある
- 製品だけでなく、システム全体の構成を理解している
- セキュリティ対策を継続的に支援できる
- 個人に依存せず、組織として対応できる
- 技術的な制約やリスクを正直に説明できる
何を販売しているかだけでなく、誰が、どのような技術力で、導入後まで支えてくれるのか。この視点を持つことが、信頼できる相手を見極める第一歩になります。
ネットワーク環境の見直し、セキュリティ対策、障害対応でお困りの場合は、フォースネットのシステムインテグレーションへご相談ください。窓口を一本化する考え方は分割発注の責任の谷と、一気通貫型事業者の価値でも扱っています。
出典
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(2025年5月27日公開)
2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書
KPMGジャパン・日本経済新聞社「サイバーセキュリティサーベイ2026」
KPMGジャパンのプレスリリース(2026年2月)
MM総研「民間企業におけるサイバーセキュリティ対策の動向調査」(2026年9月)
MM総研のニュースリリース