IPAが2026年7月16日、DX動向2026調査のポイントを公開した。回収数は1,799社。AIの導入割合は従業員規模で分かれ、利用用途も導入効果も業務効率化に関する項目が高い割合を占めている。今回公開されたのはポイント資料で、図表は画像として掲載されているため、各図表の集計対象社数は本文テキストからは確認できない。
この記事の要点
- AIの導入割合は従業員1,001人以上で8割近く、101人以下では16.6%と規模による差が出ている。
- AIの利用用途(AI導入企業が対象とみられる集計)は「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%で最も高く、「生産・物流・サービス提供の計画支援」は6.0%にとどまる。
- 効果の内容は「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%、「売上や利益が向上した」は3.9%となっている。
1,799社への調査、実施は2026年4月から6月
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2026年7月16日、国内企業に対して毎年実施しているDX動向調査の結果のうち、DXの取組と成果、AI活用動向、人材育成などのポイントを公開した(出典: IPA「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公表」、2026年7月16日公開)。調査対象は国内企業の経営層、情報システム部門、DX推進部門等で、回収数は1,799社、調査実施期間は2026年4月17日から6月12日である。IPAはこれを2025年度調査として実施し、公表資料の名称は「DX動向2026」となっている。
以下で扱う割合は、いずれもこのポイント資料に記載された数値である。本記事の「今回確認した本文テキスト」は、プレス発表本文とポイント資料から抽出できた本文を指し、画像として掲載された図表内の凡例・注記は含まない。設問ごとの集計対象社数、規模区分ごとの回答社数、業種構成、抽出方法はこの範囲に含まれていないため、各割合が1,799社全体を分母としているとは限らない。IPAは利用用途を「AIの利用用途」、効果を「AI導入による効果」として示しており、設問名からはいずれもAIを導入した企業を対象とした集計と考えられるが、対象社数は確定できない。
DXについては、8割近くの企業が何らかの形で取り組んでいると回答している。設定した目的に対して成果が出ているかを尋ねた設問では、6割の企業が「成果が出ている」と回答した。いずれも過去2回の調査と大きな変化はなく、ほぼ同水準で推移している。
取組項目別に見ると、「アナログ・物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性の向上」で成果が出ているとの回答割合が高い。一方、「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」「企業文化や組織マネジメントの根本的な変革」は前回調査よりわずかに伸びたものの、デジタル化や業務効率化と比べると相対的に低い割合にとどまる。
AI導入は企業規模で分かれている
AIの導入状況を従業員規模別に見ると、規模が大きいほど導入が進んでいる。従業員1,001人以上の企業では8割近くが導入している一方、101人以下の企業では16.6%であり、規模による差が数字として出ている。
ただし、この16.6%を同規模の企業全体の導入率としてそのまま当てはめることはできない。今回確認した本文テキストには、規模区分ごとの回答社数、区分内の業種構成、調査対象の抽出方法、導入の判定基準が含まれていない。自社の状況と比べる用途では、報告書とデータ集の公開後に、集計条件について追加情報が示されたかを確認する必要がある。
AI導入による効果の状況では、「一定の効果はあった」が50.6%と最も高い。「期待以上の効果があった」と「期待どおりの効果であった」の合計は31.8%で、多くの企業が何らかの効果を得ている一方、期待どおり以上に届いた割合は限定的な水準にある。
用途は文書と情報収集に集中している
AIの利用用途では「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%と最も高く、次いで「文書・レポートの作成(社内・社外)」が80.5%、「情報検索・収集・分析・レポーティング」が77.0%と続く。上位3項目はいずれも文書作成や情報収集に関するもので、IPAは業務効率化を目的とした用途が中心になっていると整理している。最上位の項目は音声の要約や翻訳、校正を含む複合的な選択肢であり、文書の要約だけを指すものではない。
これに対して、「自社製品・サービスの高度化」は10.9%、「生産・物流・サービス提供の計画支援」は6.0%であり、事業の高度化や新たな価値創出につながる用途の回答割合は業務効率化等と比べて低い。
文書系
要約・翻訳・校正が82.5%、文書・レポートの作成が80.5%。
情報収集系
情報検索・収集・分析・レポーティングが77.0%。
事業高度化系
自社製品・サービスの高度化が10.9%、計画支援が6.0%。
効果の内容も業務効率化に寄っている
AI導入による効果の内容では、「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%と最も高い。次いで「企画提案等の品質や速さが向上した」が48.9%、「残業時間の削減につながった」が29.2%となっている。
一方、「顧客満足度が向上した」は4.5%、「売上や利益が向上した」は3.9%、「対象となる顧客が拡大した」は2.7%で、企業価値創出に関連する効果の回答割合は数%台に収まっている。IPAは、用途の集計でも効果の集計でも業務効率化・迅速化が中心だと整理している。なお、この2つの集計は別々の設問であり、どの用途を選んだ企業でどの効果が出たかという対応関係は、今回確認した本文テキストには示されていない。
用途差の原因は、今回確認した範囲では特定できない
上位と下位でこの差がどこから生じているかは、今回確認した本文テキストでは扱われていない。そこには、各用途で対象となったデータの種類や保存場所、AIと業務システムの接続状況、その用途を選ばなかった理由も含まれていない。
AIの技術的な得意分野、費用、出力品質、リスク評価、人材、既存システムとの接続状況など、複数の要因が候補として考えられる。どの要因がどの程度効いているかは、今回確認した範囲では判別できない。IPAは報告書でAIの導入・運用課題も分析するとしている。用途差の背景を判断できる追加情報が含まれるかは、報告書の公開後に確認が必要になる。
AIをDX推進の手段に位置づける企業は54.2%
AI利活用のDX推進に対する位置づけを尋ねた設問では、「DXの推進の一部としてAIを活用している」と「DXの推進のためAIを中心に活用している」の合計が54.2%となり、DXに取り組む企業の半数以上がAIをDX推進の手段として位置づけている。
その一方で、「DXとAIは個別に取組んでいる」と回答した企業も、DXに取り組む企業の4分の1を占めており、DXとAIを個別の取組として進めている企業が一定の割合で残っている。
DX推進人材の不足感は同水準が続いている
DXを推進する人材の「量」の確保状況では、「やや不足している」「大幅に不足している」の合計が85.5%だった。2024年度、2023年度とほぼ同じ水準で推移しており、不足感は解消していない。
AI関連人材についても、多くの人材種別で「不足している」が過半数を占める。「AIに理解がある経営・マネジメント層」および「AIツールを活用して、自社の事業に活かせる従業員」では不足の割合が他と比べて減少しているものの、「現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」「データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材」では、不足しているとの回答割合が高いまま残っている。
報告書とデータ集は2026年7月下旬に公開予定
今回公開されたのは調査結果のポイントで、より詳しい結果を掲載した「DX動向2026」報告書およびデータ集は2026年7月下旬に公開予定とされている。報告書ではDXの成果指標、企業文化と風土、データの利活用や連携状況、AIの導入・運用課題、DXを推進する人材のスキル把握状況なども扱われ、過年度調査と同じ設問については経年比較を行った100ページ超のデータ集があわせて公開される。IPAは2026年8月5日に本調査結果に基づく説明会も予定している。
今回のポイント公開の段階で読み取れるのは、利用用途と導入効果のいずれの集計でも、業務効率化に関する項目が高く、企業価値創出につながる項目が低い水準にとどまっているという分布である。各図表の集計対象社数や設問の詳細な条件について追加情報が示されたかは、報告書とデータ集の公開後に確認が必要になる。
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